7つの先進事例からみるミュージアムと地域づくり

<長野県小布施町/山梨県北杜市清里/岐阜県郡上市大和町/愛媛県内子町/島根県大田市大森町/島根県奥出雲町/島根県雲南市吉田町>

●地域資源をミュージアムへ

地域には、長きにわたって人々が生きた歴史が織り込まれている。その土地の自然環境や地理的位置、土壌、地下資源をもとに産業を生み、発達させ、人々が暮らしを営んできた。そこで蓄積された富や交流、文化もまた、人々によって伝えられ、地域独自の歴史に刻まれてきた。それは、その土地にしかない、その土地から引きはがすことのできないものとして根付いている。これらの地域資源をミュージアムとして調査・研究し、社会に導き出していこうとするとき、地域資源は知恵の源となる。

●未来に機能させていくための再評価

高度経済成長時代以降、多くの地域では、人口減少や少子高齢化によって地域の疲弊に直面した。このことから発生した課題は、単に経済的衰退にとどまらず、アイデンティティや誇りの喪失、若者の流出による活力の低下を招いた。また、緊急性に直面しないまでも持続可能性への不安や、経済的に恵まれたとしても偏った価値観から環境や人の心が豊かさを失っていく場面も現れた。
こうしたなか、自らが生きる地域からアイデンティティを見出し、環境的、精神的、経済的豊かさを創造していくための基軸として「地域ミュージアム」の存在があると言える。そして、そこには地域の歴史や文化を将来にわたって機能させていくための再評価活動がある。それらは地域の歴史・文化を深く広く調査・研究し、知識や考えを導入し、論究し、様々な表現力をもって発信していく活動である。これは、地域ミュージアムにとって最も重要な活動である。

●ミュージアムを活かした交流活動

人々が交流することは、社会に豊かさを生み出す手段である。地域を訪れる人がその景観や歴史、文化と対話することで知的豊かさ、心の豊かさを得ることができる。そして人と人とが対話することでさらにその充足感は高まることになる。当然、人が動けば交通やサービス、物販といった需要が発生し、これを供給する手段をもつことにより経済的な豊かさを生み出していくことになる。
こうした交流を動機づけ、長い間にわたって機能させる力をもっているのが地域の歴史や文化に根付いたミュージアムである。このような交流によってもたらされる経済活動は、文化活動を持続的に発展させていく仕組みをつくっていくことになる。

●交流サービスから地域産業へ

交流や観光によるサービスは地域に幅広く波及していくものである。消費者へ直接サービスや商品を提供し、そのための商品を開発・製造し、原材料の生産を活発化する。産業の一連の流れを地域内で起こし、拡大することになる。活発な交流が行われれば消費は増加し、製造業や生産への需要は大きくなる。多様な産業活動が活発になれば多様な起業家や働き手が地域に生まれ、人々の創造性を高めていくことにもなる。

●持続可能な地域の発展のために

ここに示す7つの先進事例では、いずれも地域の歴史に学び、地域独自のアイデンティティを導き出し、地域の持続的な発展を目指しているものである。そこには、核となる「ミュージアム」があり、文化活動や交流活動を通して地域社会に貢献する存在になっている。
地域ミュージアムを中心に、その土地固有の「風格」「品格」「人格」を追求し、「地域の未来のためにどう機能させていくか」を考えていくことが地域ミュージアムの未来を切り拓いていくことになる。